マメハモグリバエ(花/ガーベラ・キク)

ハモグリバエは俗に“エカキムシ"と呼ばれ、幼虫が葉にもぐり、 くねくね曲がったトンネル状の食害痕を残すため、キクなどでは著しく商品価値を落とす。マメハモグリバエは侵入害虫であるが、1990年に静岡県のガーベラ、キク、 トマト、セルリーで発生しているのが確認された。長野県内では、1992年に県南部のキクとガーベラで初めて発生が確認されたが、その後発生は確認されていない。
被害と診断
本種による被害は、直接的なものと間接的なものの2つに分けられる。直接的な被害は、幼虫による食害痕が農作物の外観を損ね、商品価値を低下させるもので、キクなどの花き類の場合、わずかの食害痕でもあれば著しく商品価値が下落してしまう。また、成虫は摂食と産卵のために小さな傷を葉面上に点々とつけるが、これも同様に商品価値を低下させる。間接的な被害は、幼虫の寄生が多くなることで光合成が阻害され、植物の生育が劣るものである。その結果として収量が減少したり収穫時期が遅延したりする。海外では成虫が病原菌を媒介した例が報告されているが、我が国では病害との関連は不明である。
発生生態
成虫の体長は2mm程度で、雌成虫は発達した産卵管で葉面に穴をあけ、そこからにじみ出る汁液をなめたり葉内に1卵ずつ産卵したりする。雌は1日に100回以上もの摂食・産卵行動をとるため多発圃場では葉面上の小斑点が無数にみられる。雄成虫は葉に穴をあけることができないので、雌のつくった穴を利用して汁液をなめる。また、成虫は黄色に誘引される習性を持っている。
卵は、葉の表皮下に産み込まれる。半透明のゼリー状で長径約0.2mm、短径約0.1mmの楕円形である。幼虫はウジ状で、体色は濃黄色である。幼虫は葉肉内に潜って内部を掻き取るように食害して進むためくねくねと曲がった食害痕ができる。ナモグリバエなどが葉肉内で蛹になるのに対して、本種は幼虫が老熟すると葉の表皮を破って地上に落下し、土塊の下や土壌間隙で蛹化する。
1雌当たりの産卵数は、寄生植物によって大きく異なるが、キクでは80~300卵との報告がある。
防除方法
本種は多くの薬剤に対して感受性が低いので、薬剤のみによる防除ではなく、総合的な防除の必要がある。本種の発生は、苗での持ち込みに由来する場合が多いので、被害のない苗を用いる。また、施設栽培では、成虫の侵入を防ぐために開口部を寒冷紗で覆う。被害残渣は焼却処分して次の発生源にならないようにする。圃場内及び圃場周辺の雑草にも寄生するので、圃場衛生に注意する。
成虫は黄色に強く誘引されるので、黄色粘着リボンを利用して発生の確認をする。